氷竜が消え去った後、そこには、氷のクリスタルが残っていた。
それを手にすると同時に、またひとつ、私の中のなにかが解放されるのを感じた。
これで、集めた光のクリスタルは、5つ。
残る一つは、風のクリスタルだけど……今までの感じだと、たぶん、ガルーダが持っている様な気がする。
「イーディス! 無事か!?」
幻視から覚めた時、アルフィノくんが駆け寄ってくるのが見えた。
どうやら、戦闘に決着が付いたので、こちらの様子を見に来たようだった。
「エンタープライズが思ったより損傷していてな。現在シドが応急修理をしている」
そう言って、エンタープライズの方を仰ぎ見るアルフィノくん。
ドリユモン卿の話だと、修理しようとしていたところで、砦を竜族に奪われたという話だったから、もしかすると、結構酷い状況なのかも知れない。
私達は、アルフィノくんと共に、エンタープライズの方へと近づいて行ったのだった。
「どうだろう、シド。飛ばせそうか?」
エンタープライズに辿り着くと、シドさんが懸命に修理を行っている最中だった。
なんだかもう、見ても全然わからない様な機械を、テキパキと修理しているところを見ると、やっぱり、伝説の機工師なんだなぁと、改めて感心してしまう。
「……ああ。何とかなりそうだ」
修理を終えた機械の蓋を閉めながら、シドさんが返事をする。
とはいえ、やはり、ここでは本格的な修理は無理な様で、とりあえず飛べるようにしただけの応急処置みたい。
「まずは、近くの都市へ向かおう……そうだな、ここからだとグリダニアが近いか。そこで、しっかりとした整備をしよう。戦いはそれからだ!」
そう提案するアルフィノくんの言葉に従い、私達は、グリダニアへと向かう事にした。
「不思議なものだ。記憶を失っていても、体は覚えている……やはり、これは俺の船なのか……くッ、ダメだ。思い出せん……」
飛空艇の操舵輪に手を掛けながら、そう呟いて頭を振るシドさん。
そして、シドさんが操作すると同時に、凍り付いていたエンタープライズは息を吹き返し、曇天の空へと舞い上がったのだった。
無事、グリダニアへと辿り着いた時には、すっかり夜も更けてしまっていたけれど、温暖な気候に身も心も解れる様な気がした。
アルフィノくんやシドさんも同様に感じていた様で、どこかしら、表情が柔らかくなっている気がする。
「……ここまで飛んできた様子を見るに、話に聞いていたほどの性能は出ていないようだ。やはり、内部機構が損傷しているのだろう」
すっかり、こびり付いていた氷も解けたエンタープライズを見上げながら、アルフィノくんが呟いた。
その言葉に、シドさんも同様に感じている様で、本来の姿ではないと、アルフィノくんの言葉を肯定していた。
「蛮神ガルーダの居城は嵐の中。エンタープライズの真の性能が発揮されなければ、たどり着くことはできないぞ」
「そうだな……基本的な修理や改修は、部品さえあれば何とかなるだろう」
アルフィノくんの言葉に頷きながら、シドさんもエンタープライズを見据えつつ、腕を組んだまま応える。
「しかし問題は、その嵐だ。どれほどの規模のものかは解らないが、いずれにせよ、立ち塞がる風壁をどう突破するか……」
思案するように、目を閉じるシドさん。
その隣で、アルフィノくんも、なにか良い手はないかと、ブツブツと呟きながら考えている。
「風壁……風の力……何らかの方法で、打ち消すことができればいいのだが……」
「打ち消す……そうか、その手があった」
アルフィノくんの独り言に、なにかヒントを得ることが出来たのか、シドさんはうれし気に手を叩いたのだった。